| 平成23年9月16日(金)に大館市民文化会館で、秋田県と大館市の共催による「新エネルギーセミナーinあきた2011」が開催されました。
会場となった大館市では、木質ペレットストーブを市の公共施設に導入し、設置費補助金制度を創設するなど、木質バイオマスの利活用に積極的に取り組んでいます。
同セミナーは、県内関連企業や近県の普及団体などが、森林資源活用の推進と木質エネルギーの普及拡大による、環境にやさしい社会を構築することを目指した情報交換の場として行われました。
最初に主催者を代表して小畑元大館市長から「東日本大震災があり、これから我々は何をなすべきかという気運が高まっているこのタイミングで、新エネルギーについて考えるセミナーが当大館で行われることを誇りに思う。市民を代表して感謝している」と開会の挨拶がありました。
続いて行われたセミナーは、筑波大学の熊崎実名誉教授による、「森林バイオマスのエネルギー利用と地域振興」と題した基調講演で幕を開けました。
熊崎名誉教授は、まず自然エネルギー先進地域であるEUの中でも、木質燃料がエネルギー消費量の10%にもなるオーストリアが原発を封印した例などを挙げ、
「昔から、必要なエネルギーを森林バイオマスでまかなってきた日本人が森林を利用しなくなったのは、用材として良材だけを集め、薪や炭にできるような低質材は山に捨ててくるようになってしまったからだ」と現況を嘆きながらも、
「森林の伐採可能量が不足しつつある欧州に比べ、戦後に植えた膨大な人工林を抱えながら、林業不振で間伐などの森林管理もままならない日本は宝の持ち腐れ状態である」
と説きました。
世界のエネルギー供給と比較して見ると、東北をはじめとする日本の地方は、中山間地に小水力・風力・地熱など、バイオマス以外にも利用できる自然エネルギーの宝庫でありながら、なけなしの金を出して都会や海外からほとんどのエネルギーを買い続けている異常な状態だといえるようでした。
講演の後は3人の講師による事例紹介が行われました。
最初の講師である秋田木質ペレット普及促進協議会の青木貞雄会長は、ペレットストーブの展示会などをはじめとするPR活動の現状などを紹介し、さらに家庭や事業所の暖房以外の燃料としての木質ペレットの応用も見据えた展開を示しました。
「悲観せず着実に1台1台、ストーブ、ボイラーの数を増やしていこうと思う。それが地球環境を守ることにもつながるのだから」という話が印象に残りました。
続いて隣の岩手県紫波町からは、産業部環境課の松村寿弘循環政策室長が、同町の森林を活用した循環型まちづくりを紹介しました。
公共施設建設には町内業者による町産木材を使用し、一般住宅建設にも町産材の利用補助金を設けこれを奨励している。また小学校の暖房用にはペレットボイラーを設置していることを紹介し、
「えこ3センターという複合型施設では、間伐材のみならず、家畜の排泄物や生ゴミまで集積し『堆肥』『ペレット』『粉炭』『木酢液』まで町内で生産し消費する」と話し、同町の循環型リサイクルシステムが地産地消に根ざしたものであることを強調しました。
おもしろい取り組みとしては、森林から集積所まで山から木材を搬出する「間伐材を運び隊」というグループへの参加を公募し、指定された搬出日に運んだ分の重量証明書により1tにつき町内で利用できる5,000円分のクーポン券を発行するというものがありました。
最後に津軽ペレット協同組合の松野武司代表理事が、国内クレジット制で新たに認められた、プログラム型排出削減事業を利用し、ペレットストーブ利用者個人が、削減したCO2をクレジットとして売却できるという国内初の試みを紹介しました。
ペレットストーブを利用するメリットが、他の暖房方式では得られない付加価値にまで拡がるこの事業には、普及拡大へ向けた新たな可能性を感じました。
最後に、事例紹介を行った3名に加えて、大館市産業部地域振興課の黒田一志資源政策係長がパネリストとして参加し「木質バイオマスの利活用を推進するために」と題したパネルディスカッションが行われました。コーディネーターの熊崎名誉教授からは「木質ペレット」をキーワードにというテーマが提示され、現状と普及拡大へ向けた意見交換が活発に行われました。
新エネルギー導入を模索する行政関係者や、木材関連事業者をはじめとする約150名の参加者は、地元以外の様々な取り組みや意見に触れられたことで、今後の問題点やその解決に向けた方策のヒントが数多く得られたのではないでしょうか。
今回は木質バイオマスをテーマに、循環型エネルギーの普及促進という新しい流れをリードする企業と自治体の取り組みや苦悩を目の当たりにしました。
この循環という大きな歯車を回して軌道に乗せるためには、助成制度だけではなく、材料が容易に確保できる環境の早期整備や、住民意識を向上させるような行政の改革も不可欠であるということを実感せずにはいられません。
試算したコストが膨大であるとして新エネルギー導入を控える姿勢をあきらかにする自治体もある中で、8月26日には再生エネルギー特措法案が可決成立し、来年7月には施行されることになりました。
県と各市町村の足並みがそろっているとは言い難い中でも、秋田県が自前の資産で自身のエネルギーを確保していくことは、地方の真の意味での自立につながるでしょう。また誇れるようなエネルギー先進県になることが、この地に留まって暮らそうという人が増えることにもつながるのではないかと思いました。
秋田県にとって新エネルギーの普及促進は、目先のコストの問題や、地球温暖化防止対策のひとつという側面から見るだけではなく、未来への責任という大きな夢が託された事業として考えていくべきではないでしょうか。
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ペレットストーブ展示 |
ペレットを利用した暖房システム |
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秋田県地球温暖化防止活動推進センター
県北デスク 五十嵐洋 |
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