平成21年10月28日(水)〜30日(金)の3日間、青森県の公立小川原湖青年の家で、文部科学省と環境省主催の「平成21年度 環境教育リーダー研修基礎講座」が開催されました。今回の講座は、『「自然・人間・地球」の未来につなげよう!』と地域に根ざした環境教育リーダーを養成する事を目的に、環境活動の実践者や環境教育の専門家をお招きし行われました。
<日程>詳しくは、コチラ
1日目 10月28日(水)
(1) 講演 「希望への学びあいへ 今やっていることを どうつなげ ひろげるか」
森 良氏(NPO法人 ESD推進会議 理事)
(2) 講演 「子どももわかる自然環境教育」
藤田 均氏(青森大学大学院 教授)
2日目 10月29日(木)
(3) 屋外観察会 森の中で「気づきから見つける科学的真実」
藤田 均氏(同上)
(4) 講演 「小川原湖周辺の地質・歴史民俗」
川村 正氏(人・自然・教育研究所 所長)
(5) 講演 「小川原湖の環境バロメーター」
相馬 孝氏(小川原湖自然楽校 校長)
(6) フィールドワーク 仏沼の四季(植物・野鳥観察)
関下 斉氏(NPO法人 おおせっからんど)
(7) フィールドワーク 根井沼の自然(湖沼の不思議、浮き島)
(8) フィールドワーク 根井団体活動センターへ(旧根井小学校)
(「マリモ」から学ぶ小川原湖・廃校を活かす環境活動)
(9) 体験学習 「小学校向け環境教育プログラム(省エネゲーム)」
木立 義隆氏(青森県環境政策課)
(10) 映像講話 「考えよう、地球温暖化」
中根 豊氏(青森県環境マイスター)
3日目 10月30日(金)
(11) 講義・ワークショップ「生きること、賢治から学ぶ体験学習」
吉成 信夫氏(森と風のがっこう主宰)
(12) まとめ・ワークショップ「学びを活かし、伝えるコツと方法」
遠藤 智栄氏(環境コーディネーター) |
1日目は、環境教育を実践する方法として、二つの講演が設けられました。初めに、講師の森 良氏から『希望への学びあいへ 今やっていることを どうつなげ ひろげるか』と題し、講演していただきました。
森氏は、「持続可能な社会づくり、地域づくりにつながる学習はすべてESD※1」と説明した上で、実践的な問題解決型や参加体験型の学びの方法を取り入れる事で、教える側も学ぶ側も、共に「学びあうこと」で価値観をゆさぶり、考えを深め、行動する力を育むと話されました。そして、「子供達に、環境問題に意欲的な大人(地域住民や親など)や専門家などとの交流を通し、『ほんものの体験』をさせてあげて下さい。」と話されました。
次に、『子どももわかる自然環境教育』と題し、講師の藤田均氏より講演していただきました。藤田氏は、「人間の脳細胞は年々死んでいくため、子供時代に自然に親しんでおかないと、せっかく持って生まれた五感の機能が衰退します。」と指摘されました。そして、それを避けるためには、子供のうちに自然に浸る喜びを教える事が重要だとし、「インタープリテーション」という方法を教えて下さいました。
藤田氏によると、「インタープリテーション」とは、真実を指導者が伝える理科や科学と違い、子供達が実物(植物など)を見たり触ったりする事で、自ら考える事だそうです。具体的には、子供向けは体験型であり、大人向けは科学的な法則性に基づき、体験から得たものを考える事だそうです。参加者は、すでにインタープリテーションを実践している、青森大学の学生の写真から、その重要性を感じているようでした。
2日目は、屋外観察会やフィールドワークなどが行われました。初めに、初日に続き藤田氏より、『森の中で「気づきから見つける科学的真実」』と題し、今回の研修先である、公立小川原湖青年の家周辺の松木林で、屋外観察会を実施しました。観察会では、「笹の葉柄はどこか?」「松の実はどれ?」などと質問をする先生役と答えを考える生徒役、全体を評価する評価役に分かれ、グループごとにインタープリテーションを実践してみました。参加者の中には、小中学校で理科を担当している先生もいましたが、答えを求める理科との違いに悪戦苦闘している様子でした。
次に、午後からのフィールドワークに備え、小川原湖(青森県の三沢市・東北町・六ヶ所村の3市町村にまたがる湖)について予備知識を教わりました。一つ目は、『小川原湖周辺の地質・歴史民俗』と題して、講師の川村正氏より、小川原湖の面積や小川原湖周辺で発見されたナウマンゾウの臼歯の化石についてなどを、詳しく説明していただきました。
そして、二つ目は、『小川原湖の環境バロメーター』と題し、講師の相馬孝氏より、小川原湖に生息する「マリモ」から小川原湖の水質などを詳しく説明していただきました。それによると、一般的にマリモは、水質が悪化すると生息出来ないため、水環境のバロメーターとしての役割があるそうです。近年は、水質の悪化が懸念されている小川原湖ですが、「ウィットロキエラサリナ」というマリモの親戚が発見された事もあり、水環境保全の重要性を特に訴えていました。
|
|
|
| 写真3 屋外観察会(1)
|
写真4 屋外観察会(2) |
| |
|
|
|
|
|
|
|
| |
|
午後からのフィールドワークでは、関下斉氏を現地ガイドにお招きして、小川原湖周辺の自然から、環境教育を実践するためのヒントを学びました。フィールドワークでは、「仏沼」や「浮き島※2」、「マリモの生息地」などを実際に見て回りました。
その中の仏沼(ラムサール条約の登録湿地)では、湿地に生息する「ヨシ」の背丈を参考に、土壌の硬さによって植物の成長具合が違う事などを教えていただきました。また、環境教育の参加型の実践として、仏沼に生えている植物を使って、参加者全員で草笛に挑戦してみました。こちらでは、音が出た人も出ない人も夢中になり、環境教育の楽しさを体感しているようでした。
さらに、フィールドワークの最後には、廃校を活かす環境活動として『根井団体活動センター(旧根井小学校)』に向かい、センターの中の環境活動展示室(根井ミュージアム)などを見学しました。こちらでは、当時の生徒が作成した、環境に関する研究グラフや風力発電模型などがあり、環境教育の集大成を見る事が出来ました。
|
|
|
| 写真7 仏沼入口
|
写真8 仏沼ヨシの群生 |
| |
|
|
|
|
|
|
|
| |
|
|
|
|
| 写真11 浮き島(2)
|
写真12 浮き島(3)
|
| |
|
|
|
|
|
|
|
| |
|
|
|
|
| 写真15 根井団体活動センター(旧根井小学校)
|
写真16 根井ミュージアム(1) |
| |
|
|
|
|
|
|
|
| |
|
|
|
|
| 写真19 根井ミュージアム(4)
|
写真20 根井ミュージアム 風力発電
|
| |
|
|
|
写真21 根井ミュージアム(6) 浮き島「青森県文化財指定書」
|
| |
|
2日目の夜は、体験学習と映像講話が設けられました。初めに、体験学習では、講師に木立義隆氏をお招きして『省エネゲーム』を体験しました。テーマは「テレビや冷蔵庫などの家電製品の買い替えで、CO2排出量をどれだけ減らせるか?」で、グループごとに競いあいました。
また、学習のねらいは、「@地球温暖化の原因や影響、防止に向けた国内外の取組を知ること A省エネの大切さや、実践方法について理解すること」です。このゲームは、小学校高学年のプログラムという事でしたが、参加者からは、「小学生には難しすぎるのでは?」という指摘もありました。しかし、子供達が好きな「カードゲーム」を応用する学習方法に、多くの関心が集まり、ぜひ使用してみたいという声が上がっていました。次に、映像講話『考えよう、地球温暖化』と題して、講師の中根豊氏より、環境教育に役立つ本の紹介をしていただきました。こちらでは、その中の「ハチドリのひとしずく」という本に、考えさせられる内容だと、特に興味が注がれていました。
最終日の3日目は、講義のまとめとワークショップが行われました。初めに、『生きること、賢治から学ぶ体験学習』と題し、講師の吉成信夫氏より、自身の学校(森と風のがっこう)で開催しているサマースクールについて紹介していただきました。こちらでは、小中学生がエコな暮らしを体験してみようと、地元住民協力の元で、宿泊型の環境教育が行われています。
具体的には、小型風力発電の制作や薪を使った湯沸かしなど、自然エネルギーを活用した暮らしの体験ができる内容になっています。また、講演中のスクリーンには、サマースクール中に、生命の尊さに感極まって泣く子供の姿が映し出され、自然との触れ合いが、いかに重要であるかを訴えていました。次に、まとめとして、ファシリテーターの遠藤智栄氏より『学びを活かし、伝えるコツと方法』を伝授していただきました。遠藤氏は、伝え方のひとつとして、研修中の3日間を回想し、最も印象に残ったことを「絵」にする方法を取り、グループごとの意見交換を実施しました。これにより、今回の研修で学んだ事を再確認し、環境教育を実践する上での、「思いを表現する方法」などを学びました。
今回の研修では、講師の方から、様々な環境教育の方法を教わりましたが、共通する考え方として、「答え(結果)が出なくても、考える過程が大事である」という事を学びました。そして、温暖化防止を含めた環境問題についても、常に模索する姿勢が重要なのだと、再確認するきっかけになり、とても良い経験になりました。
※1 ESDとは、人類の未来をより良い状態へと変えるための手法の一つとされており、世界各国で生じている貧困・紛争・環境破壊や人権といったあらゆる問題を包括的に解決することを目指すものです。
※2 小川原湖に隣接する根井沼にあり、泥炭層で出来ています。根井沼の浮き島(天然記念物)は、最大で2000年くらいの歴史があり、風に吹かれて沼の中を漂っています。(根井沼の泥炭層は、生育に時間がかかり、1年で1oしか成長しません。)
| |
秋田県地球温暖化防止活動推進センター
県北デスク 津嶋麻由子 |
|