1.事業の経緯
秋田県地球温暖化防止活動推進センター(NPO法人環境あきた県民フォーラム)(以下、秋田県センター)は平成25年(2013年)から国の補助事業として実施している「地域での地球温暖化防止活動基盤形成事業」の「地域における地球温暖化防止活動促進事業」を県内の二酸化炭素(CO2)排出量の削減やその啓発に活用しております。
平成28年度においても引き続き環境家計簿を用いてCO2排出実態の把握を行うと共に、環境家計簿の普及を進めることにしました。
2.調査対象者
環境家計簿による活動を多くの住民の方々の協力を得て広げるため、秋田県地球温暖化防止活動推進員(以下、「推進員」)、あきたエコマイスター(地域の環境保全活動のリーダーとして秋田県に登録された方々。以下、「エコマイスター」)から呼びかけていただくこととしました。
推進員、エコマイスターの皆さんへの事業に関する説明会は6月末から7月にかけて県内8カ所で行い、調査対象を4月から12月までとすることを説明しましたが、幸いにも多くにデータを集計することができました。
協力世帯数
|
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
世帯数 |
251 |
251 |
251 |
259 |
259 |
259 |
248 |
248 |
248 |
※1 総協力世帯数:270世帯(平成29年2月13日現在)
※2 調査対象者からデータの提出がない月もあり、月ごとの世帯数は総協力世帯数と異なっています。
3.調査について
家庭内における、電気、都市ガス、プロパンガス、水道、灯油、ガソリン、可燃ごみについて使用量を秋田県センターが用意した報告用紙に記入し、報告してもらいました。今年の調査は、報告用紙に3ヶ月分記入し3ヶ月ごとに報告していただくようにしました。報告用紙の裏面には月に数回、集計することがある灯油、ガソリン、可燃ごみの集計欄(メモ欄)を作成しました。また、調理や給湯に使用するエネルギーについては、調理と給湯を分けて調査を行いました。
年間を通して皆さんから協力いただいたデータを基に、昨年収集したデータと比較できるように4〜12月を対象にしています。
4.調査結果
4.1.調査対象者の内訳
データ提供いただいた方の内訳は次の通りです。
単位:人
|
推進員 |
エコマイスター |
一般 |
不明 |
合計 |
平成28年度 |
39 |
27 |
204 |
0 |
270 |
平成27年度 |
34 |
30 |
178 |
2 |
244 |
※不明は、推進員、エコマイスター、一般の区分がわからない方。平成28年度はデータ報告用紙の配付方法を変更したため不明者はなし。
4.2.調査対象者の環境家計簿(1世帯1ヶ月平均)
4〜12月の1ヶ月あたりのエネルギー使用量を示します。
調査対象者1世帯当たりの環境家計簿(1ヶ月平均)
項目 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
平均 |
電気(kwh) |
472 |
438 |
339 |
340 |
370 |
386 |
354 |
427 |
489 |
402 |
都市ガス(m³) |
13 |
12 |
10 |
8 |
8 |
7 |
6 |
8 |
10 |
9 |
LPガス(m³) |
10 |
9 |
9 |
9 |
9 |
9 |
12 |
12 |
7 |
10 |
水道(m³) |
25 |
24 |
24 |
26 |
25 |
25 |
27 |
27 |
24 |
25 |
灯油(ℓ) |
93 |
38 |
12 |
14 |
16 |
14 |
49 |
89 |
159 |
54 |
ガソリン(ℓ) |
57 |
71 |
46 |
68 |
68 |
68 |
67 |
65 |
67 |
64 |
可燃ごみ(kg) |
25 |
26 |
24 |
23 |
25 |
23 |
27 |
30 |
29 |
26 |
4.3.協力対象者のCO2排出量(1世帯1ヶ月平均)
4〜12月の1ヶ月あたりのエネルギー使用量をCO2排出量に変換した値を示します。
協力者1世帯当たりのCO2排出量
単位:kg-CO2
項目 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
平均 |
電気 |
203 |
188 |
146 |
147 |
159 |
166 |
152 |
184 |
210 |
173 |
都市ガス |
28 |
26 |
22 |
18 |
17 |
16 |
13 |
18 |
22 |
20 |
LPガス |
59 |
56 |
56 |
53 |
53 |
56 |
72 |
69 |
42 |
57 |
水道 |
6 |
6 |
6 |
6 |
6 |
6 |
6 |
6 |
6 |
6 |
灯油 |
233 |
95 |
31 |
34 |
41 |
35 |
124 |
223 |
398 |
135 |
ガソリン |
131 |
164 |
106 |
157 |
156 |
157 |
153 |
150 |
154 |
147 |
可燃ごみ |
9 |
9 |
9 |
8 |
9 |
8 |
9 |
10 |
10 |
9 |
合計 |
667 |
543 |
374 |
421 |
440 |
443 |
529 |
659 |
841 |
546 |
4.4.世帯構成
世帯の人数構成について集計しました。
調査対象者の世帯人数は2〜3人、60歳以上方が多いことが分かります。
5.オール電化世帯と灯油について
オール電化の家庭のCO2排出量と灯油のみの排出量について集計しました。
オール電化の世帯のCO2排出量は対象が25世帯と全体に比べ少ないので月別増減のみ示します。全体の傾向として調査対象者のCO2排出量とほぼ同じ様な傾向にある事が分かります。オール電化世帯では、ガスの使用はなく、調査対象者全体の排出量の電気と灯油の部分を電気で占める形になっています。また、オール電化の世帯でも、暖房に補助的に灯油を使用している家庭がありました。調査対象1世帯あたりのCO2排出量と灯油のCO2排出量を比べると同じような傾向にあり、灯油の影響を受けていることがわかります。
6.環境家計簿をつけての感想
環境家計簿をつけての感想を幾つか紹介します。
- 「今月はどれくらいちがうかな?」と電気、ガス、ガソリンなどその都度メモをつける習慣が身につくようになってきた。そのことが少しは良くなってきたことと思う。
- 環境を汚さないようにと意識するようになり、生ごみはEMボカシと一緒に畑に埋め、燃やすごみを減らしている。そうすることで、畑には一切化学肥料を使用しなくなった。また、できるだけ無駄な電力を使わないよう、こまめにスイッチを切るなど気を配るようになった。
- 気楽な気持ちで記入してきたが、続けているうちに生活を見直すきっかけになり大変良かった。また、電気機器の交換や新しい機器を購入することによりどのように変化するのか興味深いこともある。
- 何気なく扱っていた「使用量のお知らせ」にはたくさんの情報が詰まっていることが分かった。目に見えること(数字)で、今後の生活を見直すことができそうだ。
- 今までも少しは環境のことを考えて行動してきたつもりだったが、環境家計簿をつけてみて、数字できちんと確認するともっとできることがあると気付かされた。
- 今まで数値を気にすることはなかったが、環境家計簿をつけるようになってから、「なぜ?」という疑問を持って取組むようになった。
環境家計簿に関する調査は今後も続けていきます。引き続き、皆様のご協力をお願いいたします。
7. 学識経験者による考察
二酸化炭素排出量について月毎の変化で最も特徴的なのは,12月(冬期)が6〜8月(夏期)の概ね2倍程度になることではないだろうか。これは秋田に限らないことだが,暖房に灯油が欠かせないためだと推測される。一方で,6〜9月を比較すると6月がやや少ないものの極端な変化はない。特に,電力の変化が小さいことから皆様が冷房の使用について配慮されているのではないかと伺える。全体を見渡すと灯油の影響に目が行きがちなので,思い切って灯油を除いて数値を比べてみると,昼が短く(明かりを付ける時間が長い)寒い時期は不利だが,月毎のバラツキはそれほど大きくないとも見て取れる。そのため,全体の二酸化炭素量削減を図るには年間を通して使用している電力(照明の効率化,待機電力消費量の確認)やガソリン使用量を検討することが効果的だと見受けられる。冬期に関しては,やはり灯油が気になるがこの使用量削減は簡単では無いと感じる。寒い環境で過ごし,健康を害してはいけないので適切に熱エネルギーを得ながら(もちろん環境低負荷型手段で熱を生み出す事は推進されるべき),如何に熱を無駄にせずに生活するかがポイントになるのではと考えられる。
ここで,ご存じの方には何を今更と思われるかもしれないが,少し“水”について取り上げさせて頂く。水は私たちの生活に欠かせないもので,年齢・性別などによって違えど人体の50%以上は水であると言われている。
また,地球表面の約70%が水で覆われ(ほとんど海),気候にも影響を与えるとされている。水にはたくさんの面白い特徴が有るが,家庭におけるエネルギーに関するものとして“蒸発熱”と“熱伝導”があげられる。夏期に“打ち水”や“ミスト(霧状に噴射した水)”で涼を取られている方も多いと思われる。このとき利用しているのが,水が蒸発に伴って熱を奪う現象である。この“蒸発熱”は,冬期には意図しないものを冷たくしてしまうことがある。水の沸騰は1気圧の環境下では100 ℃で起こるが,100 ℃にならなくても洗濯物が乾くように水の蒸発は低温でも起こる。熱を無駄にしないようにする対策のひとつとして,熱源が貴重な場所では水に濡れたものは放置しない方がよいと言えるだろう。また,もう一つの“熱伝導”についてだが,その名の通り熱の伝わりやすさである。家庭内にもある身近な熱伝導が高い物質にはアルミニウムや銅などの金属があるが,水は液体なので「まとわりついたり」,「しみこんだり」する。このことから,乾いた状態よりも早く熱を奪うことがある。雨や雪がとけた後に濡れたままにしておくと寒く感じるのは,これらの合わせ技とも言える。さらに,水の“比熱”も特徴的であり利用したいところである。水の利用は夏期に注目されることが多いが,冬期も上手くつきあうために意識してみても良いかもしれない。
秋田大学大学院理工学研究科物質科学専攻
講師 小笠原正剛
注意事項
- 本報告書のCO2排出係数は秋田県地球温暖化防止ハンドブック(平成25年2月発行)の係数を使用しています。
項目 |
電気 (kwh) |
都市ガス (m³) |
LPガス (m³) |
水道 (m³) |
灯油 (ℓ) |
ガソリン (ℓ) |
可燃ごみ (kg) |
CO2排出係数 |
0.43 |
2.2 |
6.0 |
0.23 |
2.5 |
2.3 |
0.34 |
- 集計データは使用量のお知らせ等に記載されているものを使用しており、実際に使用した月とデータを集計した月がずれている場合があります。
- 集計結果は、今回の事業に協力いただいた方のデータを集計したものです。
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