1.事業の目的
秋田県地球温暖化防止活動推進センターでは環境家計簿の普及を図るため、平成29年度も引き続き環境家計簿を用いてCO2排出実態の把握を行いました。
2.調査内容・調査対象者
CO2の排出実態を調査するため家庭内における電気、都市ガス、プロパンガス、水道、灯油、ガソリン、可燃ごみの使用量と使用料金を3ヶ月ごとに報告していただくようにしました。
この調査は秋田県地球温暖化防止活動推進員(以下、「推進員」)及びあきたエコマイスター(地域の環境保全活動のリーダーとして秋田県に登録された方々。以下、「エコマイスター」)をはじめ、地域住民の皆様の協力を得て実施しました。新たに協力をいただいた27世帯を含め、総協力世帯数は245世帯(推進員41世帯、エコマイスター30世帯、地域住民174世帯)です(平成30年2月2日現在)。
3.調査結果
3.1.調査対象者のエネルギー使用量等(1世帯1ヶ月平均)
4~12月の1ヶ月あたりのエネルギー使用量等を示します。
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 平均 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
電気(kWh) | 384 | 343 | 283 | 283 | 369 | 299 | 320 | 348 | 427 | 340 |
ガス都市(㎥) | 7 | 6 | 5 | 5 | 4 | 4 | 4 | 6 | 7 | 5 |
ガスP(㎥) | 6 | 4 | 4 | 4 | 5 | 4 | 4 | 5 | 4 | 4 |
水道(㎥) | 51 | 48 | 60 | 51 | 82 | 75 | 24 | 30 | 19 | 49 |
灯油(L) | 76 | 29 | 13 | 9 | 11 | 12 | 65 | 81 | 168 | 52 |
ガソリン(L) | 65 | 67 | 68 | 66 | 71 | 66 | 65 | 64 | 62 | 66 |
可燃ごみ(kg) | 32 | 37 | 32 | 31 | 36 | 30 | 29 | 30 | 37 | 33 |
※表は横にスクロール可能です。
灯油は大容量タンク使用による購入月のばらつきがあるため平均を参照ください。
3.2.調査対象者のCO2排出量(1世帯1ヶ月平均)
4~12月の1ヶ月あたりのエネルギー使用量等をCO2排出量に換算した値を示します。
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 平均 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
電気 | 165 | 148 | 122 | 122 | 159 | 129 | 138 | 150 | 184 | 146 |
都市ガス | 15 | 12 | 11 | 10 | 8 | 9 | 9 | 13 | 16 | 11 |
LPガス | 36 | 26 | 26 | 26 | 29 | 26 | 26 | 29 | 24 | 27 |
水道 | 12 | 11 | 14 | 12 | 19 | 18 | 6 | 7 | 5 | 11 |
灯油 | 190 | 72 | 33 | 23 | 28 | 31 | 162 | 203 | 421 | 129 |
ガソリン | 149 | 153 | 157 | 151 | 162 | 152 | 149 | 147 | 143 | 151 |
可燃物 | 11 | 13 | 11 | 11 | 12 | 11 | 10 | 10 | 12 | 11 |
合計 | 577 | 434 | 373 | 353 | 417 | 374 | 499 | 558 | 804 | 488 |
※表は横にスクロール可能です。
(参考)1世帯当たり1ヶ月平均のCO2排出量の推移(H26~29)を示します。
各年度ともに4月から6月にかけて下がり9月から上昇傾向を示し12月から1月にかけて一番の山となっています。12~3月のばらつきは灯油を大容量タンク使用している方の購入月のばらつきによるものと思われます。
(参考)県庁所在地(秋田市)の月ごとの平均気温を示します。
気温とCO2排出量の関係を大まかにみると、気温の上昇とともに排出量は減少傾向を示し、また、気温の下降に伴って排出量は増加していきます。
また、気温が最も上昇する8月には冷房に起因すると思われる小さなピークが見られたほか、12~3月にかけては暖房に起因してCO2排出量が大きなピークとなっています。
4.世帯人数別の1人当たりCO2排出量
世帯人数別の1人当たりCO2排出量を調査しました。
4.1.世帯構成について
調査対象者の世帯構成は下図のとおりです。
1~5人の世帯が全体の94%を占めています。
4.2.世帯人数別の1人当たりCO2排出量について
4.1.で構成割合の多い1~5人世帯について世帯人数別の1人当たりのCO2排出量について示します。
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 平均 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1人世帯 | 191 | 175 | 154 | 188 | 167 | 196 | 179 | 192 | 230 | 186 |
2人世帯 | 178 | 134 | 115 | 109 | 125 | 126 | 117 | 140 | 206 | 139 |
3人世帯 | 113 | 105 | 86 | 81 | 99 | 89 | 101 | 132 | 173 | 109 |
4人世帯 | 148 | 126 | 80 | 86 | 98 | 87 | 82 | 104 | 180 | 110 |
5人世帯 | 183 | 164 | 123 | 106 | 108 | 86 | 80 | 77 | 110 | 115 |
※表は横にスクロール可能です。
世帯人数が増えると1人当たりのCO2排出量は減少する傾向にありますが、4人、5人世帯では違いは見られませんでした。
5.アンケートから
みなさんのアンケートから家庭の中の省エネ活動で工夫している点を紹介します。
- こまめに電源を切り、ガスもストーブも短時間の使用を心がけています。
- ごみなど可燃物は出すものを小さく、生ごみはしっかり水をきり、缶とペットボトルはつぶして小さくします。
- 台所にいる時間が長いので蛍光灯をLEDに替えました。
- 部屋の温度を上げずに済むように、絨毯を一枚上に敷く、外側のガラス窓にエアパッキンを貼る、洋服はウール等の暖かいものを着るなどしています。
- 室内に廊下が多いのでカーテンを活用し、窓には断熱素材のものを使いなるべく熱の出入りを断つようにしています。
- 風呂は続けて入り、冬は反射式ストーブでお湯を沸かし煮物をします。
- 調理時間の短縮に圧力なべを使用しています。
- 大きな省エネをしないのが基本。必要のない事にはこまめに対応しています。
- CO2排出量の一番大きいのが灯油。次に大きいのがガソリンとなっています。ふんわりアクセルはもちろん、ガソリン代は一ヶ月5,000円以内に心掛け今年は4,000円弱と効果ありでした。
- 冬は薪ストーブなのでその上で出来るだけ調理するようにしています。
- 冬の暖房を保つため、ガラスの内側にエアパッキンを貼り、暖房をオイルヒーターにして省エネに取り組んでいます。
- 二人きりの家庭ですので、できるだけ同じ部屋(リビング)で過ごすようにしています。二人とも湯たんぽを利用しています。反射式ストーブも利用してお湯を沸かしています。
6.環境家計簿の効果について
東日本大震災直後から省エネに取り組み始め、平成26年から環境家計簿を活用し本格的に省エネに取り組んでいる方の事例を参考に掲載します。(秋田市Aさん)
※3年平均は省エネ活動に取り組む前3年間(平成21~23年)の平均値です。
この図は、環境家計簿を活用し省エネ活動に取り組んだ前・後を比較しています。省エネへの取り組みで冬季と夏季の電気の使用量の変動がなくなり、一年を通して平準化されていることがわかります。取り組んだ内容は次の通りです。
- 省エネナビ※1やワットチェッカー※2を活用し使用電力を見える化する
- TV/PCの省エネモードの活用
- 照明器具やエアコンフィルタの清掃
- 適切な室温管理(暖房時20℃、冷房時28℃を目安に)
- 炊飯器使用改善(保温を止める)
- 冷蔵庫内の整理整頓
- 隙間風侵入防止(窓やドアの隙間を塞ぐ)
- 電気ポットの使用取りやめ
- トイレ便座温度調節(便座温度を高から低へ切替るとともに夜間の電源オフ、温水の使用中止)
- 電気こたつ代替考案(こたつの電気を使わず温風ヒーターの温風を取り込む)
- 照明のLED化
- 電気カーペットの使い方(使用面積を切り替えて使用)
- エコ冷蔵庫への買換え
- 重り(ペットボトル)を利用し引戸の半自動化(引戸の開放による室温変化を抑える)
上記の取組みに当たってはワットチェッカーを活用し、個々の機器の使用電力を調べ、使い方を工夫したものや最新の機器へ買い替えたものなどがあります。また、便座などは使い方を工夫しただけでも20kwh/月の節電効果を上げています。
※1 省エネナビとは
家庭における電気使用量(Wh)をリアルタイムで表示することができる装置です。家庭で今どれだけ電気を使っているか、グラフでわかりやすく表示されますので、家電製品をつける/消すと、どれだけ電気使用量が変わるのか、目で見てわかるようになります。
※2 ワットチェッカーとは
家電製品などの消費電力や電力量などを測定することができる製品です。家電製品のコンセントをワットチェッカーに差し込んだ後コンセントに繋げることで、簡単にチェックすることができます。ワットチェッカーは、一般的に消費電力を含めた8つの項目を測定することができます(ただし、ワットチェッカーのメーカーや機種によって測定できる項目が違います)。
7.COOL CHOICEへの取組み
地球温暖化対策のための国民運動「COOL(クール) CHOICE(チョイス) (=賢い選択)」が展開されています。
「COOL CHOICE」とは省エネ・低炭素型の製品の活用など温暖化対策になる、また快適な暮らしにもつながるあらゆる賢い選択をしていこうというものです。
みなさんが「家庭の中の省エネ活動で工夫している点」で回答されているような内容が「COOL CHOICE」となります。
秋田県地球温暖化防止活動推進センターでは各種会議や各地のエコフェスティバルなどで「COOL CHOICE」について普及・啓発しています。みなさんの周りの方へも「COOL CHOICE」を広めてください。
8.感想
環境家計簿をつけての感想を幾つか紹介します。
- 電気製品などは長く使うものほど節電タイプのものを使うと節電効果があると思いながら環境家計簿をつけた。
- 主に光熱費のCO2排出量を見つめていると興味深い。電気使用量の増加は加齢によるところであると思う。しかし、金額が年間で50,000円減を確認した。もっといろいろ遊べるぞ!
- 家も古いし,2人なので省エネするところはどこかなと思っていましたが,省エネアンケートに例を見て探せばまだあるのかと参考になりました。
- 家計簿をつけることによって、燃料などの節約の大切さを改めて感じております。
- 書いてみることによって、光熱費が把握でき、節約を心がけるようになりました。
- 環境家計簿をつけ始めて今年で2年目くらいかと思いますが、当初はメモする感覚がなく大変だったのですが、2年目となるとメモする癖が付き簡単でした。単年度だと変化が分からないので、昨年のデータと比較してみてどうだったのか見てみたいと思います。
- 昨年との比較をしたのは初めてでした。全般的に若干の増加でした。このことから,生活の中での節約を考えなければならないと思いました。
9.学識経験者によるコメント
月毎の1世帯あたりのCO2排出量を見ると、平成29年においても冬が夏の2倍程度となった。これは気温の変化も関係するため、無駄を減らすのは大前提として、過ごしやすい環境を維持するためにはやむを得ない部分もあると考えられる。また、平成26年から29年までの推移が示され、概ね同じ傾向であることが確かめられた。これは、この事業にご協力頂いた全ての皆様のご尽力により生み出された資料として意義があると見受けられる。
個人的なことで恐縮だが、我が家の日々の電気使用量の記録を眺めていて、「家電機器を買ったのが数値に現れているな」とか、「長期休暇で不在にした日が多かったな」と感じることがある。このような家庭の記録だけでなく、数年前から自身の”ライフログ”の収集が趣味になっている。毎日の歩数や睡眠時間、心拍数といった測定データを後日確認することで、そのときの行動を単純に思い出すだけなく、達成感や疲労感などの気持ちの変化を再認識するのが楽しいからだ。また、”継続は力なり”という言葉の解釈は幾つかあるようだが、蓄積された記録を見比べることでハッと気がつくこともある。今回、環境家計簿に取り組んでいる皆様の素晴らしい取り組みや感想が掲載されており、私も勉強になった。環境家計簿の記録は大変なこともあるだろうし、「意味があるのだろうか」と感じる方もいるかもしれない。記録だけではエネルギーの節約にはならないかもしれないが、「きっかけ作り」になるだろうし「データを残す」ことはとても価値があることではないだろうか。「あの頃は寒かったな」とか、「帰省やイベントで家に人が沢山集まって楽しかったな」とか、思い出の振り返りになることがあるかもしれない。さらに、日々の行動を”見える化”することで客観的な評価ができると期待される。この事業にご協力頂いている皆様の貴重なデータの蓄積が、皆様自身の新しい発見や繋がりを生み出すことになれば幸いである。
秋田大学大学院理工学研究科物質科学専攻
講師 小笠原正剛
注意事項
- 本報告書のCO2排出係数は秋田県地球温暖化防止ハンドブック(平成25年2月発行)の係数を使用しています。
電気(kWh) 都市ガス(㎥) LPガス(㎥) 水道(㎥) 灯油(L) ガソリン(L) 可燃ごみ(kg) CO2排出係数 0.43 2.2 6.0 0.23 2.5 2.3 0.34 ※表は横にスクロール可能です。
- 集計データは使用量のお知らせ等に記載されているものを使用しており、実際に使用した月とデータを集計した月がずれている場合があります。
- 集計結果は、今回の事業に協力いただいた方のデータを集計したものです。
作成・発行・問合わせ
秋田県地球温暖化防止活動推進センター(特定非営利活動法人 環境あきた県民フォーラム)
E-mail: mail@eco-akita.org
TEL: 018-839-8309
FAX: 018-839-0188
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