1.事業の目的

 秋田県地球温暖化防止活動推進センターでは環境家計簿の普及を図るため、平成30年度も引き続き環境家計簿を用いてCO2排出実態の把握を行いました。

2.調査内容・調査対象者

 CO2の排出実態を調査するため家庭内における電気、都市ガス、プロパンガス、水道、灯油、ガソリン、可燃ごみの使用量と使用料金を3ヶ月ごとに報告していただくようにしました。
 この調査は秋田県地球温暖化防止活動推進員(秋田県知事より委嘱された方々。以下、「推進員」)及びあきたエコマイスター(地域の環境保全活動のリーダーとして秋田県に登録された方々。以下、「エコマイスター」)をはじめ、地域住民の皆様の協力を得て実施しました。
 平成29年度に引き続き取組んでいただいた175世帯に加え、新たに17世帯から協力をいただいたほか3世帯が取組みを再開されました。総協力世帯数は195世帯(推進員33世帯、エコマイスター23世帯、一般住民139世帯)となります。

3.調査結果(1世帯1ヶ月平均)

 集計結果は、小数点以下の処理のため合計値が異なっている場合があります。

3.1.調査対象者全体

3.1.1.全体のエネルギー使用量等

 1~12月の1ヶ月あたりのエネルギー使用量等を示します。

※表は横にスクロール可能です。

1世帯当たりのエネルギー使用量等(1ヶ月平均)
  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 平均
電気(kWh) 479 430 390 322 311 231 256 318 283 275 334 336 330
都市ガス(㎥) 8 7 7 6 6 4 4 3 3 4 5 5 5
LPガス(㎥) 15 19 16 20 25 33 26 33 30 19 14 14 22
水道(㎥) 15 19 16 20 25 33 26 33 30 50 101 124 77
灯油(L) 203 143 129 85 25 23 6 7 33 50 101 124 77
ガソリン(L) 45 41 42 83 68 77 42 53 44 47 42 45 52
可燃ごみ(kg) 28 24 27 21 23 23 24 32 22 18 185 16 23

 

3.2.継続して環境家計簿に取組んだ方(178世帯)

 これまで継続して環境家計簿に取組んだ方(178世帯)の結果を示します。なお、1月から3月は平成29年度の取組みを休止した3世帯を除く175世帯のデータになります。

3.2.1.エネルギー使用量等

 1~12月の1ヶ月あたりのエネルギー使用量等を示します。

※表は横にスクロール可能です。

1世帯当たりのCO2排出量(1ヶ月平均) 単位:kg/CO2
  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 平均
電気 206 185 168 139 134 99 110 137 122 118 144 14 142
都市ガス 18 15 15 12 12 9 9 7 7 8 10 11 11
LPガス 30 30 24 36 36 32 23 24 29 21 17 24 27
水道 3 4 4 5 6 8 6 8 7 4 3 3 5
灯油 508 358 323 214 62 57 14 18 82 123 250 309 193
ガソリン 103 94 97 191 156 176 96 123 101 110 95 104 120
可燃物 10 8 9 7 8 8 8 11 8 6 6 6 8
合計 878 695 639 603 414 388 265 327 354 391 528 601 506

 1世帯の1ヶ月あたりのエネルギー使用量等のCO2排出量、参考として1世帯当たりのCO2の排出量の推移をグラフで示します。

 

3.2.継続して環境家計簿に取組んだ方(178世帯)

 これまで継続して環境家計簿に取組んだ方(178世帯)の結果を示します。なお、1月から3月は平成29年度の取組みを休止した3世帯を除く175世帯のデータになります。

3.2.1.エネルギー使用量等

 1~12月の1ヶ月あたりのエネルギー使用量等を示します。

※表は横にスクロール可能です。

項目 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 平均
1世帯当たりのエネルギー使用量等(1ヶ月平均)
電気(kWh) 497 430 390 280 282 218 244 301 269 252 325 333 317
都市ガ(㎥) 8 7 7 5 6 4 4 3 3 4 5 5 5
LPガス(㎥) 5 5 4 4 4 4 3 3 4 3 2 3 4
水道(㎥) 15 19 16 21 26 34 25 34 30 17 12 13 22
灯油(L) 203 143 129 81 32 21 6 7 27 41 98 108 75
ガソリン(L) 45 41 42 90 72 83 46 56 46 45 41 46 54
可燃ご(kg) 28 24 27 25 27 27 27 35 25 18 19 16 25

3.2.2.CO2排出量

 1~12月の1ヶ月あたりのエネルギー使用量等をCO2排出量に換算した値を示します。

※表は横にスクロール可能です。

項目 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 平均
1世帯当たりのCO2排出量(1ヶ月平均) 単位:kg/CO2
電気 206 185 168 120 121 94 105 130 116 108 140 143 136
都市ガス 18 15 15 12 12 9 9 7 7 8 10 11 11
LPガス 30 30 24 21 21 21 17 20 24 17 11 18 12
水道 3 4 5 6 8 6 8 7 4 3 3 3 5
灯油 508 358 323 204 81 53 14 18 68 102 245 270 187
ガソリン 103 94 97 207 165 190 105 129 106 103 94 106 125
可燃ごみ 10 8 9 9 9 9 9 12 9 6 6 6 8
合計 878 695 639 577 415 383 265 323 335 346 508 556 493

 

3.3.平成30年度新たに環境家計簿に取組んだ方(17世帯)

 平成30年度新たに環境家計簿に取組んだ方(17世帯)についてエネルギーの使用量について調査しました。

3.3.1. 新たに環境家計簿に取組んだ方(17世帯)のエネルギー使用量等

 新たに環境家計簿に取組んだ方には4月からのデータ報告をお願いし、12月までのデータを得られました。得られた4~12月の1ヶ月あたりのエネルギー使用量等を示します。

※表は横にスクロール可能です。

項目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 平均
新規17世帯のエネルギー使用量等(1世帯1ヶ月平均)
電気(kWh) 478 404 279 279 302 281 256 260 316 317
都市ガス(㎥) 53 47 30 15 26 14 2 13 52 28
LPガス(㎥) 8 6 5 5 4 3 4 5 6 5
水道(㎥) 19 17 19 17 18 20 18 17 16 18
灯油(L) 123 77 50 18 0 75 153 99 174 85
ガソリン(L) 57 53 58 50 59 53 67 62 67 58
可燃ごみ(kg) 15 16 14 18 21 20 24 25 24 20

 ※都市ガス及びガソリンについては、他の項目に比べて報告世帯数が少なく、数値の評価に当たっては留意する必要があります。

3.3.2. 新たに環境家計簿に取組んだ方(17世帯)のCO2排出量

 4~12月の1ヶ月あたりのエネルギー使用量等をCO2排出量に換算した値を示します。

※表は横にスクロール可能です。

項目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 平均
1世帯当たりのCO2排出量(1ヶ月平均)
電気 206 174 120 120 130 121 110 112 136 136
都市ガス 117 103 66 32 57 31 4 29 114 61
LPガス 50 33 32 28 22 20 25 27 35 30
水道 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4
灯油 307 191 124 45 0 187 383 249 436 213
ガソリン 132 123 133 114 135 121 154 142 155 134
可燃ごみ 5 5 5 6 7 7 8 9 8 7
合計 821 633 484 349 356 490 690 571 888 587

 

3.3.3. 環境家計簿に新たに取組んだ方(17世帯)と継続して取組んでいる方(178世帯)のCO2排出量の比較

 平成30年から取組んだ17世帯と継続して取組んでいる方たちのCO2排出量をグラフで示します。

 

 平成30年度から新たに取組んだ17世帯と継続して取組んでいる178世帯を比べると各月とも継続して取組んでいる世帯のCO2排出量が低く、継続の効果が出ていることが見てとれます。また、6月から8月の暑い時期には、その他の月に比べ差が小さくなっています。
また、上表の平均について項目別の内訳を次に示します。

 これによると、新規17世帯と継続178世帯では特に都市ガスと灯油のCO2排出量に違いがあることがわかります。この差異については、世帯構成や住宅の暖房設備・厨房設備機器等の種類との関わりを考慮していく必要があります。

 

4.アンケートから

 環境家計簿に取組んでいただいた方々のアンケートの中から家庭での省エネで工夫している点や意見などを紹介します。

  • 具体的に記入された数字を比べてみることで使用量が多くなった理由を考えることができ、改善すべきことが見えてきます。
  • 毎日あまり考えずにムダも多かったのですが、月ごとの光熱費等を記入することで、生活全般を見直すようになりました。
  • 「寄る年波には勝てぬ」のことわざ通り、暑さ寒さには我慢出来ず分かってはいるけど出来ないことが多くあります。でも無駄を省く努力は惜しまず続けたいと思っています。
  • 環境家計簿を付け始めてから6年目ですが、今は付けることが習慣化し、環境や省エネに対する意識も強くなりました。これからはこれまでの結果を分析し、より一層工夫しながら環境は「自分のため、人のため」という思いで取り組んで行こうと考えています。
  • 自分以外の協力者に詳しく説明して関心を持ってもらえるよう、常にコミュニケーションを取り、地球温暖化理解者の拡大に努めています。
  • 生活人数で使用量の増減が大きく、比較が難しいです。そのため、継続的に行うことが必要であると思いました。
  • 家電製品は省エネになっていて、使用量が環境家計簿の付け始めの頃より30%~40%くらい減っている等の変化が見えました。
  • 日中、天気が良い日に室温が28℃まで上がるので、ストーブを消しています。
  • 寒くなってきたので窓に断熱材を貼り、カーテンをさらに厚めのものと取り替え、便座等、外出する時は一旦電源を切っています。
  • なるべく歩くようにし、車の使用を減らしました(昨年比259.42kg-CO2削減)
  • 昨年よりも節約(使用量)しているのに電気代が上がっていました。

9.学識経験者によるコメント

 過去5年間のCO2排出量の推移(参考)グラフの経月変化のパターンをみると、例年と同様な季節性がみられ、概ね夏季から秋季(6月から9月)に低く、冬季から春季(11月から4月)に高い傾向を示している。平成30年の一世帯当たりのCO2排出量(1ヵ月平均値)を項目別にみると、CO2排出量の多い項目のトップ3は電気、灯油、ガソリンであり、項目全体の約8~9割を占めている。CO2排出量の月変化は電気やガソリンと比べ灯油で顕著であり、その月別割合は夏季に比べ冬季に増加している。一世帯当たりのエネルギー使用量等(1ヵ月平均値)のデータから、灯油の消費量は夏季に比べ冬季に顕著な増加を示していることから、冬季のCO2排出量の増加は暖房が主要因であろう。年によって多少の相違はあるだろうが、冬季の暖房を灯油に依存している現状では今後も同様な傾向が続くと予想される。
 また、今年度の報告書では新たな試みとして、新規に環境家計簿に取り組んだ世帯(新規世帯)と継続世帯とのCO2排出量の比較が行われている。一見すると新規世帯は継続世帯に比べ全般にCO2排出量が高めの傾向である。今回の比較では提示されていないが、例えば、新規世帯の地理的な偏り(県北、県央、県南)や市街地区と郊外地区でのガス普及率の違い等によるCO2排出量の差があるのか否か、これらの要因がCO2排出量に及ぼす影響も知りたいところである。また、各項目の平均値だけでなく、バラツキ(標準偏差)の程度を示したうえで比較を行うことが必要かもしれない。
 環境家計簿に率先して取り組んでおられる調査協力者の皆様にとっては「何を今更!」ではあるが、環境家計簿は1980年に大阪大学の盛岡らによる提唱が始まりであり、その目的は、「CO2排出量を減らす行動を実践することにより、地球温暖化を防止するとともに、ほかの環境問題の解決にも貢献し、なおかつ家計の節約にも結びつけること」とされている1)。このため、本事業では環境家計簿を用いて本県の家庭からのCO2排出実態の把握と環境家計簿の普及とに取り組んできた。しかし、残念ながら最近の総協力世帯数は250世帯前後と横ばいで、しかも、本県の総世帯数389,060世帯(秋田県、平成31年1月1日現在)のわずか0.06%である。恥ずかしながら、かくいう私もサイレントマジョリティー(99.94%)の一人である。呼びかけだけでCO2排出削減に関する多くの住民の意識や行動が変わり、環境家計簿の普及にもつながるうまい話はなく、普及の難しさを感じている。しかし、そのきっかけになり得る示唆に富む話をご紹介したい。既にご存知かもしれないが、アレックス・ラスキーという行動科学者兼米国オーパワー社の創設者(現在、オーパワー社はオラクル社傘下企業)によって5年前に報告された話だが、実に簡単な住民へのメッセージのみで地域の電気代を節約できた方法を科学的調査によって実証したものである2)。そのメッセージとは「調査の結果、ご近所の家庭の77%が冷房を切ってファン(扇風機)をまわしています。どうぞあなたもご一緒に冷房を切ってファンにしましょう」であり、「(住民が)近所の家庭の電気代(利用料)を知ること」で効果があった。一方、頭では十分理解しているであろう「お金の節約という経済的インセンティブに訴えたメッセージ」や「環境負荷低減や節電の重要性を良心に訴えたメッセージ」等はいずれも効果がなく、ラスキー氏は社会的プレッシャーを上手に利用することの重要性を述べている。俄には信じ難く、国民性や冷暖房の違い等、ケースバイケースの話かもしれないが、社会的プレッシャーを上手に利用すれば行動を促すインセンティブとなり、CO2排出削減や環境家計簿の普及に役立つかもしれません。皆さんならどう行動しますか?

引用文献
1)井元りえ、小澤紀美子:日本家政学会誌、51(5)、357(2000).
2)日本語TED新着: http://www.ted-ja.com/2013/10/alex-laskey-how-behavioral-science-can-lower- your-energy-bill.html.

秋田県立大学生物資源科学部
生物環境科学科    
准教授 木口 倫

 

注意事項

  • 本報告書のCO2排出係数は秋田県地球温暖化防止ハンドブック(平成25年2月発行)の係数を使用しています。
  • CO2排出係数は毎年更新されていますが、同一世帯での比較のため、同じ係数を続けて使用しています。

    ※表は横にスクロール可能です。

      電気(kWh) 都市ガス(㎥) LPガス(㎥) 水道(㎥) 灯油(L) ガソリン(L) 可燃ごみ(kg)
    CO2排出係数 0.43 2.2 6.0 0.23 2.5 2.3 0.34
  • 集計データは使用量のお知らせ等に記載されているものを使用しており、実際に使用した月とデータを集計した月がずれている場合があります。
  • 集計結果は、今回の事業に協力いただいた方のデータを集計したものです。

作成・発行・問合わせ

秋田県地球温暖化防止活動推進センター(特定非営利活動法人 環境あきた県民フォーラム)

http://www.eco-akita.org/

E-mail: mail@eco-akita.org

TEL: 018-839-8309

FAX: 018-839-0188

環境家計簿をつけてみませんか?

この「環境家計簿」は、私たちの日常の生活やオフィス活動によって排出される温暖ガスの二酸化炭素量やごみの量を減らし、地球にやさしいライフスタイルやエコ・オフィスを実現するための点検簿です。

こうしたライフスタイルの転換は、家庭やオフィスの経費節約にもつながります。

毎月の電気、ガス、水道の請求書や灯油、ガソリンのレシート、出したごみの量がわかればOK!

まずはご自宅やオフィスのデータを知り、まとめてみましょう。

環境家計簿ダウンロード【エクセル・54.0KB】 (右クリック、対象をファイルに保存でダウンロードして下さい。)

記入したデータはメールでお送りいただければ環境家計簿のデータ集計に活用させていただきます。